歴史上の人物のイメージを利用して顧客に訴えるブランド戦略・商標戦略
▼2010年6月24日に、上記画像左に示す商標が指定商品 “せっけん類,化粧品” で登録になっています(登録第6262971号、権利者オリエントネットワークジャパン株式会社)。
この画像の女性は、古代エジプトの女王ネフェルティティで、エジプトの補助通貨(例えば、アメリカドルにおけるセント)の5ピアストル紙幣にも描かれています。
女王ネフェルティティは古代エジプトの三大美女の一人とされています。それゆえパッケージに女王ネフェルティティの画像を付した石鹸や化粧品は、消費者に美しさや高貴さにこだわった商品であることを感じさせることができます。
▼ところで、他人の氏名や肖像などは、商標法4条1項8号の規定によって原則として商標登録することができません。
しかし、商標法4条1項8号でいう「他人」は、通説として現存する自然人及び法人(外国人を含む。)を指しているとされているので、現存していない歴史上の人物は、商標法4条1項8号の他人の氏名、肖像などに該当しません。
それゆえ、歴史上の著名な人物の氏名や肖像をいち早く出願し、その著名性に便乗するブランディング戦略もありでした。
▼しかしながら、今はそのようなことができにくくなっています。歴史上の著名な人物名を商標登録しその使用を独占させることは、公序良俗違反になるとして、商標法4条1項7号(公序良俗違反規定)で登録拒絶される可能性が高くなったからです(2009年10月以降の運用基準)。
歴史上の人物の著名な肖像についても、公序良俗違反になると思えますが、歴史上の人物名や歴史上の人物の著名な肖像であっても日本で周知著名でない氏名や肖像は、商標登録可能です。
▼上記女王ネフェルティティの肖像については、審査において、日本での周知著名性が低いと判断され、商標法第4条1項7号に該当しないと認定され、登録されたものと思えますが、歴史上の人物の氏名や肖像は、それが著名であればあるほど強い顧客吸引力を有しています。
よって、誰もがそれを使いたいと思います。しかし、そのものズバリは他者に先駆けして出願しても登録可能性は低いです。商標法4条1項7号で拒絶されるからです。
▼それゆえ、歴史上の著名人のイメージや名声力を使ってビジネスをしたい場合には、工夫がいります。
工夫の一案は、歴史上の著名人の氏名に文字やマークを付加したり、肖像をイラスト化するなどして、独自性を付加することです。これにより、登録可能性が、格段に高まります。
これが歴史上の人物のイメージを利用して顧客に訴えるブランド戦略・商標戦略の第一歩です。
▼このような商標の登録例としては、例えば、「真田幸村の里」(登録第5857214号)、「戦国BASARA 真田幸村伝」(登録第5961089号)、上記画像右の「信長∞信長戦国歴史検定」(登録第5557224号)などがあります。